経済成長フォーラム

経済成長フォーラム・メンバーからのメッセージ

大田 弘子

大田 弘子 経済成長フォーラム座長・政策研究大学院大学教授

いまほど日本にとって成長戦略が必要なときはない。大震災後の電力不足や円高は企業の海外移転を加速させており、成長分野を国内に確保するための意図的な努力が必要だ。大震災からの復興にあたっても、雇用の創出が明確に意識されねばならない。さらに、団塊世代が65歳になり始めた今年、超高齢化はいよいよ本格化する。

実行の意志さえ持てば、日本には成長のタネは決して少なくない。例えば、電力、農業、介護などいま何らかの問題を抱えている分野は、ここで規制の構造を変え、他業種や他地域から広く知恵と資金を集める仕組みをつくることで成長分野に変わり得る。GDPの7割以上を占めるサービス産業の生産性が低いということは、今後の上昇余地も大きいということだ。

経済成長フォーラムにおいては、こうした成長のタネをひとつずつ掘り起し、確かな成長に結びつける道筋をつくりたい。すでに始まっている先端的な取り組みに学び、イノベーションを起こすための条件を探り、それを阻害する規制の改革を提言し、成長のタネが実を結ぶための運動を起こしていきたいと考えている。

日本経済はいま大きな分岐点に差し掛かっており、ここ数年の動向は良くも悪くも今後に響いてくるだろう。経済成長フォーラムはそのような危機感に根ざして、短期集中型で活動していきたいと思う。

高橋 進

高橋 進 日本総合研究所理事長

東日本大震災の発生によって、日本経済は3つの大きな試練に直面することになった。第1は、成長力のさらなる低下である。被災地の復興が思うように進まなければ日本全体の成長力が低下することはいうまでもないが、震災をきっかけに産業の空洞化が加速し、日本経済の潜在成長力がさらに低下する恐れが強い。第2は、電力・エネルギー危機である。

今後、日本が電力不足と電力料金の上昇に直面することは確実であり、これは新たな成長制約要因となる。第3は、財政負担の増加による財政破綻リスクの上昇である。このうち、第1と第3は、日本がもともと抱えていた課題であるが、大震災によって状況がさらに悪化する懸念がある。こうした試練に立ち向かうことができなければ、日本経済は失われた20年から脱け出せないばかりか、衰退の道に入り込んでしまう恐れがある。

取り組むべき課題は多いが、3つの試練に共通している処方箋が成長戦略である。すなわち、まず潜在成長力の低下を食い止める戦略が求められる。電力危機に立ち向かうためには電力システムの改革が不可欠であるが、同時に再生可能エネルギーの育成と省エネ・節電社会の構築を進める必要がある。これは環境・エネルギー 分野の成長戦略そのものである。また、財政健全化を進めるためには歳出・歳入改革と同時に成長力の引き上げを通じた税収増が不可欠である。そして、歳出改革の柱となる社会保障制度の改革を進めるためにも、医療・介護分野などを成長分野に変えていくことが課題となる。こうした意味で、成長戦略こそが大震災後の試練に立ち向かうための基本戦略であるといって過言ではない。

冨山 和彦

冨山 和彦 経営共創基盤代表取締役CEO

昨今、経済成長について色々な議論が行われています。リーマンショックや昨年の原発事故を受け、もはや経済成長を政策目標とすべきではないという極端な議論も出てきています。しかし、我が国は、もともと資源に恵まれない島国です。1970年代初頭まで、貧しさゆえに移民を出していた国です。そんな国が、今日、飢えることもなく、世界最高レベルの長寿を誇り、平和で豊かな時代を過ごしていられるのは、明治以来の近代化、さらには戦後の経済成長路線がもたらした恩恵によるところが大です。

私の祖父母は戦前、貧しさから北米に移民し、父はかの地で生まれました。父の家族は、戦争を挟んで大変な苦労をしてきました。私たちの世代は、祖先から引き継いだ経済強国日本を、次の世代にも継承していく責任を負っているのです。

少子高齢化が進む一方で、世界的に経済競争が激化し、新たな国々が勃興してくる中、資源も広い国土も持たない日本が引き続き豊かで安定した社会であり続けるには、経済的な繁栄は必須の条件です。強すぎる経済を目指す位で、今の豊かさを維持して行くのに精一杯なのではないでしょうか。経済成長フォーラムでは、こうした21世紀の新しいパラダイムの中で、我が国の経済と企業がイノベーションを通じて競争力、成長力を高めるための社会的、政策的課題を色々な角度から議論し、より現実的な提言を模索して行きたいと考えています。